2026年8月23日
売上が伸びたのにお金が減る、危ない足し算
「忙しいのに、お金がない」の正体
このところ受注が増えて、現場も動いていて忙しい。それなのに、通帳の残高はむしろ減っている。そんな感覚を覚えたことはないでしょうか。
「売上が増えているんだから、お金も増えているはず」――これは、とても自然な考え方です。ですが工務店の仕事では、この足し算がそのまま成り立たないことがあります。忙しくなればなるほど、先に出ていくお金も一緒に増えていくからです。今回は、この「危ない足し算」の仕組みと、受注ペースの考え方についてお話しします。
売上が増えると、先に出ていくお金も増える
工事を1件受注すると、その工事が終わって入金されるまでの間に、いくつものお金が先に出ていきます。
- 材料や設備の仕入れ代金
- 職人さんへの外注費
- 諸経費の立て替え
受注が1件のときはまだ管理できても、これが2件、3件と重なると、先に出ていくお金も同時に重なります。売上という「あとで入ってくる数字」は帳簿の上でどんどん増えていくのに、手元の現金は「先に出ていくお金」の重なりに引っ張られて減っていく。これが、忙しいのにお金が減る、いちばんの理由です。
さらに入金にも時間がかかる
工事代金は、完成してすぐ全額が入るとは限りません。契約や取引先によって、請求してから実際に振り込まれるまでに日数がかかることもあります。仕入れや外注費の支払いが先、工事代金の入金はあと、という順番自体は当たり前のことですが、受注が増えるほど、この「先払い」と「あと払い」のズレが何件分も積み重なっていく、というのが growth 期特有の苦しさです。
危ない足し算をやめる
「受注件数×利益=儲け」という足し算だけを見ていると、いつの間にか手元のお金が足りなくなります。本当に見るべきなのは、「今、同時に進んでいる現場が、それぞれいくら先に出ていくお金を抱えているか」の合計です。
受注は多いほどいい、というのは半分正しくて半分危険です。件数を追いかけること自体は悪くありませんが、同時進行する現場の数と、そこにかかる先出しのお金は、常にセットで考える必要があります。
受注ペースを決める、小さな一歩
今週、ぜひやっていただきたいのは、次の1つだけです。
今、動いている現場すべてについて、「完成までにあといくら出ていくか」を紙に書き出してみる。
すべての現場の金額を足し算してみると、「思ったより先出しの合計が大きい」と感じることが多いはずです。この合計と、今の手元資金を並べて見てみるだけで、「次の受注を今すぐ動かしていいか、少し待つか」の判断がしやすくなります。忙しさに引っ張られて次々と現場を増やすのではなく、手元のお金と相談しながら受注のペースを決める。これだけで、資金繰りの苦しさはかなり和らぎます。
数字の相談は、一人で抱えなくていい
先出しのお金の合計や、受注ペースの目安は、感覚だけで判断するのが難しい場面もあります。そんなときは、税理士に数字を見せながら相談してみるのも一つの方法です。第三者の目で今の資金繰りを一緒に見てもらうと、思い込みに気づけることもあります。なお、税金や融資に関わる制度は変わることがありますので、最新の内容は税理士や窓口に確認してください。
まとめ
- 売上が増えても、手元のお金が同じように増えるとは限らない
- 受注が重なるほど、仕入れ・外注費・立て替えなど先に出ていくお金も重なる
- 「件数×利益」だけでなく、「同時進行の現場が抱える先出しの合計」を見る
- 今週、動いている現場の先出し予定額を紙に書き出してみる
- 数字の判断に迷ったら、税理士に相談してよい
忙しさは頑張っている証拠ですが、その勢いのまま受注を重ねる前に、一度立ち止まって手元のお金と向き合ってみましょう。