2026年8月7日
手元資金は月商の何ヶ月分あれば安心か、自社の目安
「月商の何ヶ月分」より先に見るもの
「手元にお金がいくらあれば安心ですか?」
これは、資金繰りの相談でよく聞かれる質問です。よく「月商の3ヶ月分」といった数字が目安として語られますが、実はこの数字、会社によってかなり事情が違います。
なぜなら、月商(その月の売上)は、材料費や外注費といった「出ていくお金」も含んだ数字だからです。工事が大きい月は月商も大きくなりますが、その分、支払いも大きくなっています。つまり月商だけを基準にすると、実態とズレることがあるのです。
そこで今回は、月商よりも先に「固定費」を基準にする考え方をご紹介します。固定費とは、工事があってもなくても毎月必ず出ていくお金のことです。事務所の家賃、車両のローン、保険料、スタッフの給料、社長自身の生活費などがこれにあたります。
「安心ライン」は固定費の何ヶ月分で考える
固定費がわかると、「もし今月から新しい仕事が一件も取れなかったとして、あと何ヶ月、今の体制を維持できるか」という見方ができるようになります。
これが、手元資金の「安心ライン」の考え方です。
- 手元の現金 ÷ 毎月の固定費 = 「あと何ヶ月もつか」
たとえば固定費が月100万円で、手元に300万円あれば、「あと3ヶ月はもつ」という状態です。この「何ヶ月分」を、何ヶ月にするかは会社によって違います。工事の入金サイクルが早い業態なら短めでも、逆に着工から入金までが長い業態や、季節によって仕事の波が大きい会社なら、長めに見ておいたほうが安心です。
大事なのは、「3ヶ月分あればOK」という正解を探すことではなく、自社の入金の波、支払いのタイミング、扱っている工事の規模を踏まえて、「うちは何ヶ月分あれば眠れるか」を自分で決めることです。これが決まっていると、通帳の残高を見たときの不安の質が変わります。「なんとなく心配」から、「あと何ヶ月」という具体的な数字に変わるからです。
今日やってみる3つのステップ
むずかしい計算は必要ありません。今週、次の3つを紙やスマホのメモに書き出してみてください。
1. 毎月必ず出ていくお金を書き出す
家賃、リース料、保険、給料、社長の生活費など、工事の有無に関係なく出ていく金額を足し算します。おおよそで構いません。
2. 今、手元にいくらあるか確認する
事業用の口座の残高です。近いうちに支払いが決まっている分(税金の引き落としなど)がある場合は、そこから引いて考えると、より実態に近づきます。
3. 「手元資金 ÷ 固定費」を計算する
これで「今のペースで、あと何ヶ月もつか」が出ます。この数字を見て、「もう少し余裕がほしい」と感じたら、それが自社にとっての「安心ラインより少ない」というサインです。
この3ステップは、慣れれば15分もかかりません。一度計算しておけば、月末に通帳を見るたびに毎回同じ不安を抱え直さずに済みます。
一人で抱えず、数字を一緒に見てもらう
固定費の洗い出しや、安心ラインの目安の立て方は、税理士に相談すると一緒に整理してもらえることが多いです。特に、季節による繁閑の波や、工事代金の入金タイミングを踏まえた資金繰りの見通しは、日々の帳簿を見ている税理士のほうが気づきやすい点もあります。
なお、資金繰りに関する制度融資や保証の仕組みは変わることがありますので、最新の情報は税理士や金融機関の窓口で確認するようにしてください。
まとめ
- 「月商の何ヶ月分」より、「固定費の何ヶ月分」で考えるほうが実態に近い
- 安心ラインの正解は一つではなく、自社の入金サイクルに合わせて決めるもの
- 固定費の洗い出し→手元資金の確認→割り算、の3ステップは15分で終わる
まずは今週、電卓を片手に「うちは今、何ヶ月分あるか」を一度数字にしてみましょう。